
やっと読み終えた
この本は臨場感の表現がうまくて手術シーンは読んでいると
自分の心臓が早くなるのがわかる
文章だけなのに妙にリアルに想像できてしまう不思議
そんな独特の表現がなされるこの作品は素晴らしいものだと思う。
リアルが故のリアルがそこにはある。
海と毒薬 / 遠藤周作
この作品は要約すると米軍兵への生体解剖という「人体実験」を描いたものである
と思って読み進めたがどうも様子がおかしい
人体実験に参加するまでの日本人達の異質な内情が
とても細やかに描かれていた。
そして私がこの作品を読んで一番感じたことは
登場する人物が全てMOBなのである
そこに自分の意思はほとんどなく
なにか流されるまま、誰かのせいにしながら判断する人たちの
恐ろしい人間性が書かれていた。
個人的に一番刺さったのは戸田の内情
————–他人の眼や社会の罰だけにしか恐れを感ぜず
海と毒薬 /遠藤周作
それが除かれれば恐れも消える自分が不気味になってきたからだ———-
この一文(実際は前後にもう少し深い内容があるがそちらは読んでみてほしい)
の中にある”少々悪いことをしても、誰にもバレなければ心からいつのまにか罪の意識は消える”という意味だと思っている
決めつけは良くないかもしれないけれど人間だれしもが墓場まで持っていく
と決めたような悪さはしたことあるんじゃないかと思う。
まさに裏表紙にかいてある
”神なき日本人の「罪の意識」の不在の不気味さ”
だと思う。
今のSNSでの誹謗中傷なども結局同じで
炎上させているのは自分の意思を持たないMOBばかり
色々と考えさせられる作品でした。
捉え方は人それぞれ自由だと思うので
是非読んだことない人は感想を教えてほしいと思う。
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